お肌のおはなし「手あれ」

――「月刊 おとなりさん」2月号(2000.02発行)より転載――

肥後尚孝

今回は手あれの話をしましょう。手あれとは文字通り、手の皮膚のあれた状態のことです。皮膚科的には主婦湿疹、手湿疹、進行性指掌角皮症などと病名がつきますが、患者さんには分かりやすく「手あれですね」と説明することが多いです。

どのような人に出来やすいかというと、家庭の主婦・美容師・調理師などの水仕事をする機会の多い人や、銀行員・タイピストなど紙幣をよく扱ったり、繰り返し指先に刺激が加わる人に出来やすいです。また、進行性指掌角皮症は一般にアトピー素因を持つ人に多く見られます。もともと外からの刺激に対して弱い皮膚の持ち主のためと考えられます。

冬はひどくなりますが、夏には軽快することがあります。

なぜ手あれになるのでしょう?手、指では皮脂腺が少ないため、皮脂膜も薄くなっています。その代わり角質層が厚くなっていて、保護する役目を果たしています。その角質層も、石けんや洗剤などを使って頻繁に水仕事をしたり、指先をよく使ったりしたあとに放っておくと、水分が失われ乾燥しやすくなります。そこへ、さらにたわしやスポンジなどによる摩擦刺激も加わると、厚い角質層は弾力性を失い、ひび割れてしまいます。

洗剤や食物など手に触れる物のすべてが悪化の原因となりうるので、日常生活での注意が必要です。そして、普段から手への刺激を少なくするような心がけが大切です。具体的な対策をお話しましょう。

(1)手の皮膚を保護してあげましょう。炊事や洗濯の時は手袋を着用しましょう。ゴムやビニールの手袋はそれらでさらにかぶれる事があるので、まず木綿の手袋をしてそれからゴムやビニールの手袋という風に重ねてみて下さい。なかなか面倒なのですが、洗い物はまとめてやるなどと工夫してみて下さい。

(2)必要以上に手を洗わない。石けんで神経質に何度も手を洗うのも悪化の原因になります。

(3)良くなっても油断しない。手あれは油断するとすぐ再発します。調子の良い時も保湿剤やハンドクリームなどで予防しましょう。

(4)外用剤を正しく使いましょう。症状によって湿疹を抑える薬や皮膚にうるおいを与える保湿剤を使い分けします。どのような時にどのような部位にどの薬を塗るのかを医師に良く聞いて下さい。

今後、一度塗ったら普通の手洗いでは効果が落ちず、一日中手を保護できるような魔法の外用剤(笑)ができると良いのですが、それまではうまく自分の手を守るようにがんばって下さい。