アトピー性皮膚炎について ―ステロイド外用薬と皮膚科専門医―

――東京23区医療マップ1999/2000年版(1999年5月10日発行)より転載――

肥後尚孝

みなさんはアトピー性皮膚炎に対するステロイド外用薬の治療と聞くと――副作用があって怖い――と考えませんか?
一口にステロイドといっても作用の強いものから弱いものまで数多くあり、適切な強さの薬を選択して必要最低限の量使うことは有効な治療法の一つの筈です。
それなのにステロイドの副作用がここまで社会問題化してしまったのはなぜなのでしょう?
原因の一つとして外用薬(塗り薬)の使用法のトレーニングを受けていない医師がむやみに強いステロイドを使った結果もあると考えられます。
つまり問題はステロイドそのものではなくて、その使い方にあるのです。

実は日本では標榜するのはその医師の専門でなくても差し支えないのです。
例えば外科しか研修していない医師が皮膚科も表記することが許されており、患者さんは看板のみで誤解してしまうことが少なくありません。
皮膚科に対するトレーニングを受けている医師かどうか判断する一つの目安として日本皮膚科学会が認定する専門医資格があります。
専門医なら先程のステロイドに限らず、塗り薬を患者さんの年齢や症状、薬を塗る身体の部位などによって適切に細かく使い分けるはずです。
保湿剤や肌を清潔に保つ等のスキンケアだけで症状をコントロールするのを目標に、症状の改善に伴って塗り薬の強さを下げ、間隔や量も減らしていく筈です。
現在の皮膚の状態に最も適した薬を選択するためにも、受診先の看板だけでなく診察する医師が皮膚科の専門医なのかも確認してみてください。