お肌のおはなし 「入浴法」
――「月刊 おとなりさん」11月号(1999.11.25発行)より転載――
肥後尚孝
今月から皮膚科専門医の立場から、皮膚の病気などについていろいろお話したいと思います。
今回は第一回ですので簡単に自己紹介します。
僕は蒲田で生まれ育ちました。医者になった時、いつかは地元の蒲田で開業し、地域のみなさんの健康のお手伝いをしようと思っていました。
今年の4月に開業した頃、ちょうどこの「おとなりさん」を知りました。
この本も地域に密着した雑誌であると分かり、何か自分の専門である皮膚の病気について、みなさんにわかりやすくお話することができればと考え、この連載を始めました。
さて、初回は皮膚の病気の人も健康な人も関係のある「入浴」についてです。
皆さんが入浴時にしていることは本当に肌のために良いことでしょうか?
意外と自分の中では常識と思っていても、専門の立場から見ると本当はこうした方が肌のためには良いのに、と思うことがあります。
まずお風呂の温度について。
日本人は昔からの習慣で熱いお風呂につかって身体を十分に暖めるというくせがありますが、本当は38~40度位の温度が適温。少しぬるめに長く入る、この方が身体も心もリラックスしてぐっすり眠れます。
また、熱いお湯は皮膚にかゆみを感じやすくします。
次に石鹸の使い方、洗い方について。
石鹸は良く泡立てて泡で洗うように、そしてその時に自分の手で洗うのが肌にとっては一番良いです。
ナイロンタオルやブラシ、なかには「たわし!」で洗うという強者もいますが、自分の顔をそれで洗いますか?
身体の皮膚も同じです。背中のように手の届かないところは日本式の手ぬぐいなどで洗うとよいでしょう。
「あかすり」と称してゴシゴシこすって「こんなに垢が出た!」と喜んでいる人がいますが、あれは垢ではなくて皮膚の角質層の部分を無理やりはがしている状態ですので、あまりお薦めできません。
優しく泡で洗ったらすすぎ残しがないようにしっかりとすすいでください。
また、これからの季節は空気が乾燥し、高齢の方は入浴時に石鹸を使用するとさらに乾燥する人がいます。そんなときは脇の下や外陰部のみ石鹸を使用し、入浴後に保湿剤を使用して、乾燥から肌を守りましょう。
入浴後は何もしないと時間がたつにつれ、入浴前に比べて肌が乾燥し、すねや腰などにかゆみが出てきます。
保湿剤を使用するだけでもかゆみがおさまることがあります。
次回からは皮膚の病気についてお話します。
質問などあれば気軽にご相談ください。