お肌のおはなし「アトピー性皮膚炎(2)」

――「月刊 おとなりさん」10月号(2000.10発行)より転載――

肥後尚孝

 今回は前回に続いてアトピー性皮膚炎のお話です。治療面を中心にお話ししましょう。

 前回、お話ししたようにアトピー性皮膚炎は慢性に湿疹をくり返す病気ですから、湿疹を治す治療が基本になります。湿疹に対してはステロイド(副腎皮質ホルモン)の外用薬(塗り薬)が良く効きます。しかし、良く効く薬のため使い方を間違えると副作用が出る可能性があります。

 ここで少しステロイドについてお話ししましょう。一時期マスコミで、アトピーではステロイドという恐い(?)薬を使ってはいけない、という話が出てきましたが、それらは誤解の多い話でした。 まず、ステロイドと言っても内服薬(飲み薬)や注射薬・外用剤などがあります。内服や注射では全身性に効果が出るため副作用も全身に出る可能性があり、例えば高血圧や肥満・骨粗鬆症(骨がもろくなる)等があります。しかし外用剤では塗った部位にしか効果や副作用は出ません。外用剤の副作用には皮膚が萎縮(薄くなる)する・毛細血管がひらく・多毛・ニキビがふえる等です。

 ではステロイドの外用剤(塗り薬)を使うときにどうしたらこの様な副作用が出ないように出来るか?まず湿疹の程度により使う外用剤の強さを調節します。ステロイドの外用剤には強いものから弱いものまで種々の強さがあります。そして塗る部位(顔なのか体なのか)によっても強さを調整します。これは塗る部位によって薬の吸収率が違うためです。年齢によっても強さを変えます。さらに、一日に何回塗るかも調節します。

 これらのことは個人によって差がありますので皮膚科の専門のトレーニングを受けた医師によって判断されます。つまり問題はステロイドそのものではなくて、その使い方にあるのです。適切な強さの外用剤を選択して必要最低限の量を使うことは有効な治療法です。

 皮膚科の専門医はステロイドに限らず、他の塗り薬も患者さんの年齢や症状、薬を塗る身体の部位などによって適切に細かく使い分けます。最近はステロイドではない外用剤で特に成人の顔や首に良く効く新しい物も出てきました。それらを上手に使い、症状の改善に伴って塗り薬の強さを下げ、間隔や量も減らしていきます。

 アトピー性皮膚炎の治療の目標は、保湿剤や肌を清潔に保つ等のスキンケアだけで症状をコントロールし、特にステロイド外用剤など使わなくても湿疹が無く日常生活に支障がない状態をキープすることです。そのためには湿疹の状態が良くなっても油断しないでスキンケアを続けることです。

 また、自己判断で外用剤を使用せずに担当の医師と状態を確認しながら使用法を決めて下さい。現在の皮膚の状態に最も適した薬を選択するためにも皮膚科の専門医に定期的に受診して下さい。