お肌のおはなし「ヘルペス」
――「月刊 おとなりさん」8月号(2000.08発行)より転載――
肥後尚孝
今回はヘルペスというウイルス感染症の話をしましょう。
ヘルペスには大きく分けて2種類あります。単純ヘルペスと帯状ヘルペスです。
まず単純ヘルペスから。正式には単純性疱疹と言い、口の回りにできた時は口唇ヘルペスとも言います。原因は単純ヘルペスウイルスですが、実はこのウイルスは皆さんの体内にひそんでいます。通常はおとなしくしていますが、風邪をひいたり疲れたりストレスがかかって体の抵抗力が弱ったときなどに症状を表します。そんなところから、風邪の華あるいは熱の華という別名もあるぐらいです。
他には夏などに顔に紫外線をあびることでも生じます。症状は最初皮膚にピリピリ、チクチク、ムズムズなどの違和感で始まり、赤くはれてきて、小さい水ぶくれができます。最終的には1~2週間でかさぶたになって治ります。
単純ヘルペスはくり返すことが特徴でくり返す人は再発のきざしがわかるようです。治療には抗ウイルス剤を使うのが効果的です。外用剤と内服薬があり、早い時期に治療を開始する方が治りも早いです。
次は帯状ヘルペス。正式には帯状疱疹と言います。体の片側半分に胴体の部分に帯状に発疹ができるために帯状疱疹といいます。原因は水痘・帯状ヘルペスウイルスでなります。同じヘルペスウイルスでも先の単純とは違うウイルス。水痘とはみずぼうそうの事で、このウイルスが最初に体内に入り込むと水痘になります。そして治ってもそのウイルスが体内にひそんでいて、疲れやストレス、老化など抵抗力が弱ったときに2度目の症状を出すのですが、この2回目が帯状疱疹なのです。
帯状疱疹の症状は神経痛と発疹。まず体の左右どちらか一方に神経痛(チクチク、ズキズキ、締め付けられる感じ、重苦しい感じなど)が出現し、前後して発疹が出ます。発疹は最初、小さく赤く少しふくれています。そのうち小さい水ぶくれができます。それらが全体として帯状に並んできます。水疱は初め透明ですが、数日で黄色や赤黒く濁ってきて破れてびらんになり、やがてかさぶたになって治ります。この様な経過が約2週間でおこります。治療には抗ウイルス剤を使用します。早期に適切な治療を行わないと発疹が治っても神経痛だけが残る帯状疱疹後神経痛と言う後遺症になる場合があります。また、顔に出来た場合、眼科や耳鼻科とも協力して症状をチェックする必要があります。
今回の皮膚病はともにウイルスが原因でなりますから他人へ伝染する可能性があります。単純ヘルペスの方は単純ヘルペスとして移りますが、帯状ヘルペスの方は一度みずぼうそうになった人には移りません(もうすでにウイルスを体内に持っているため)。しかし、みずぼうそうにかかっていない子供などには、帯状疱疹ではなく水痘として移す可能性がありますので注意しましょう。